「バリ物が出たらどのモデルでも良いのですぐに教えてほしい」と以前から伝えていたアメリカのディーラーから連絡が。写真やビデオに映るそれはまぁ見事なまでのミラーダイヤルのデイトジャスト。しかしこれはコレクターでしたら周知の事実ですが、正直写真なんていくらでも誤魔化しが効きます。例えばインスタグラムで海外のコレクターが掲載しているような一見パーフェクトに見える個体であっても、実際は傷やくすみなどが隠れるような撮り方で写していたなんてザラなこと(勿論本当に完璧なものもあります)。ですから、もし非の打ち所が無く、一切の妥協を許さない個体を求めるのであれば、面倒ですがヨーロッパであっても、アメリカであっても、わざわざ見に行く他ないのです。
で、先日彼のオフィスに行って参りました。ここは以前もサイト内で触れましたが、素敵ですよね、感覚が。絵に描いたようなハイライフスタイルの中のワン趣味として、洗練された空気感の中でビンテージが提案できる珍しいスタイルの愛好家なのではないでしょうか。テーブルの上にはビカビカのデイトジャスト。それは彼が最初から言っていたように、どこをどう見ても劣化の無い、写真と全く同じ表情をした艶々のダイヤルを持つ個体でした。
現在、2010年代に大変な盛り上がりを見せた世界的なビンテージロレックスブームもちょうど一周しかけているタイミング。この10年間、散々暴走を繰り返してきたコレクターの欲望みたいなものも一旦冷静になり、「もう終わりにしたい。上がるならどれだ」という謂わば賢い選択が試されるタイミングとなったコレクター、絶対大勢いると思いますがどうでしょうか。このような一見スタンダードで、もっと言うと「熱狂の当時は物足りなさすら感じた」デザインが今逆に魅力的と思え、デイトジャストや他には例えばエクスプローラー1を当面の相棒と考えるコレクターはきっと少なくありません。
ですが、色々と手を出してきたが結局ここに落ち着きましたという「一周証明証」となるような特別なコンディションやディテールを持つ個体であることが愛好家が選ぶスタンダードの条件であると私は考えます。
ということで完璧なダイヤルコンディションの1601デイトジャストの入荷です。本来ドレスウォッチにカテゴリーされるのですが、ミラーダイヤルに限った話ですとスポーツ物感覚で選ぶコレクターも以前から多いですよね。
そしてこのダイヤルはだいぶ特殊。本来スポーツモデルは67年まで、デイデイトとデイトジャストなどドレス物に限っては1970年頃まで、黒のミラーダイヤルが存在するのですが、これはさらに遅く1972年製なのです。
この頃は当然マットダイヤルに切り替わっていないといけない年式にあたります。しかし極めて稀にミラーが存在していまして、さらにそのダイヤルのレターがゴールドの抜き字ではなくシルバーでプリントされているという、かなり珍しいダイヤルがセットされています。


ダイヤルコンディションに関しては何も言うことはありません。とにかく綺麗。ミラーダイヤルは瑞々しく、夜光も全てがプロットされ、インデックスの状態も曇りなど無く大変綺麗な質感を保っております。
それにしてもこのシルバープリンテッドのデイトジャストは初めて手にしました。以前、何年か前に、海外のコレクターが売り物として出していたことがありました。しかしその頃はそんな仕様は無いと思ってパスしていたんですね。今考えれば勿体ないことをしました。




デイトジャスト、いかがでしたでしょうか。近年このようなスタンダードで、それもコンディションに優れた個体は見つけること、さらにはその争奪戦に勝ち実際に手にすることは難しいとされています。是非この機会に実機に触れてみてください。
最後に。最近市場というか新しいコレクターの手持ちを観察していて思うのですが、以前のような「まずはサブ、次はGMTやエクスプローラー、そしていつかはデイトナ」というビンテージロレックス好きであれば誰もが憧れる王道ルートが変わってきているような。そしてミラーにも特に拘りがなくなってきていますよね。
ミラーダイヤル特有のあの「垢抜けなさ」にこそビンテージの大きな魅力が詰まっていると私は思っているのですが。