1954年にフランスで創業したJEAN ROUSSEAU Paris(ジャン・ルソー)は、職人の手作りによる腕時計用の革ベルトを筆頭に製作している伝統的なラグジュアリーレザーメイカーです。
日本では銀座にブティックをオープン。そのバックスペースがアトリエとして機能しており、顧客が注文したベルトを常駐する数名の職人によって製作している風景が実際に見れたりもします。
昨年弊社では「JEAN ROUSSEAU×Wolf&Wolff」のコラボレーションイベントを開催しました。この企画の良かったところというか、案件として通ってしまった理由としては、「ビンテージウォッチのためのルソーによる手仕事」というやや懐古的なコンセプトにあったように思います。
この約5年間、時計というかつてはわりとクローズドであった趣味がファッションとして世界中で一般化し、ROLEXやPATEK PHILIPPEを筆頭に魅力的なモデルが次から次へと発表されました。その争奪戦を勝ち抜いた者の腕に巻かれるデイトナやノーチラス。そのスポーツカーのような迫力を持つ腕時計を対象にした商品開発は、ルソーだけに限らず絶対的なニーズがありました。しかし同じ腕時計愛好家の中でも「ビンテージ専門」という一部のマニア層が存在します。私もまさにそこなのですが、彼らからすると「ビンテージに装着したいと思える革ベルトがラグジュアリーメイカーのラインナップから年々外されていっている」と感じるわけです。そのように思う愛好家は実は多いのではと考えたのがこの企画の始まりでした。ルソーの広報のアレクサンドルさんはそれがユニークかそうじゃないかを先方のフォロワー数関係無しに判断する男の中の男です。私にとってはまるで夢のような革ベルト、すなわち「バブルバック時代のような、少々荒削りな縫製。どん臭いフォルム。を、敢えて今の時代にそれもルソーのようなメゾンメイドで」というお題に対してチャレンジングで興味があると言ってくれたのです。
詰まるところ、彼らも腕時計が大好きなわけです。私も実体験から生まれたアイデアを同じ愛好家にシェアしたいという願いがあります。実際のプロダクトがどうと言う以前に、純粋な動機から生まれる企画というのは様々な弊害を飛び越えてしまうパワーがあるのです。
結果的にイベントは成功しました。そしてまさに今第二弾の作戦会議中で、次回は新製品がどうということではなく、今私が一番興味のある物販からある意味では離脱したようなイベントを一緒に考えてくれています。そちらもご期待ください。
内容は本当に素晴らしかった。やって本当に良かった。しかし納期がかなりかなりお待たせする結果になってしまったのはごめんなさい。
ようやく銀座ブティックより全て納品されました。



人気を集めたのはやはり蛍光色のヴィヴィッドなエキゾチックレザー。たしかに暗い感じ、シックなベルトは既に持っている場合もございますので。
まるで偽物の革なんじゃないかと誤解されるほど、せっかくの高級素材を一体なんて色に染めてしまったのだ、というある種の贅沢感がありませんか?
ご注文いただいていた方々にはこの後順次メールでご連絡差し上げますのでお渡しまで今しばらくお待ちください。
私は最近ブティックでさらにもう一本新しいコンセプトで注文してきました。今凄い人気のようで1本につき4ヶ月はかかるみたいですよ。
ちなみに特注のコンセプトは「メガスモール」。意味は極太短小。



さてどう上がってくるでしょうか。
最後に。ウォッチメイカーが生み出す全く隙を感じさせないダイヤル、ケース、ムーヴメントの緻密な設計、そして少々説教くさい哲学美学は、ユーザーからしたらある意味では余白を全く与えられていません。さらに現在主流の時計製作及び販売のやり方に於いても「作ってあげる」「売ってあげる」、そしてユーザーは「着用させていただきます」といった、パワーバランスについてもネガティヴな妄想を浮かべやすいと思うのです。ですのでベルトをオーダーメイドし自身の特徴を出そうという行為は、プレイヤーに残された唯一の余白とも言え、「クリエイション」であると私は考えます。愛機でなく相棒であるっていうのが昔から語り継がれてきたこの趣味の醍醐味でもあったはずですので。