Attila Aszodi

The beauty of age and imperfection. Attila Aszodi’s straps represents a unique story as each was made from a over 50 year old English riding saddle.

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「数万ドルの時計に適したストラップはほとんど存在しない」。こう断言するのは、最も高価で希少なビンテージ時計をあらゆる角度から高解像度で撮影し、ムーブメントやシリアル番号を識別、さらにそれを文書化することを過去に担当していたAttila Aszodi氏(アティーラ・アゾディ)。

2008年のある日、彼はロレックスのサブマリーナを勤めている会社から買いました。そして彼はそれに装着したいミリタリースタイルのストラップがありましたが、そのドイツ軍用のオリジナルの革ベルトはあまりに不快なものでした。革は安く、エッジは手首に食い込み、シェイプも時計のケースにマッチしない粗悪なものであったといいます。そこで彼は革を買い、オリジナルのストラップのシェイプを修正し、さらに手首に快適にフィットする処理をエッジに施しました。しかもそのエッジの仕上げ方法は、それは彼の古く偉大なキャリアでもある、2000年当時スケートボード業界でベストセラーとなった、彼が発案した「ファイバーフレックススケートボードデッキ」のエッジに施した驚くほど滑らかになるテクニックと同じ方法でした。その魔法をなんとその腕時計用ストラップにも実験的に採用したのです。翌日、オフィスに行くと同僚と上司からそのストラップはどこで買ったものか尋ねられ、自分で作ったと答えました。しかし彼からすれば自分のような素人が作った、全く洗練されていない荒さがあるにも関わらず誰もが興味をそそられていたことに驚いたそうです。そしてその一日の終わりまでに15個の注文が入りました。

二週間後、完成したストラップの背面にイニシャルを署名し上司達に納品。上司はその場で1970年代のエクスプローラー2に装着、撮影し、当時設立されたばかりの時計愛好家のプラットホーム「HODINKEE(ホディンキー)」に掲載しました。その日何か未来を感じたアティーラ氏は、会社出勤前のまだ皆が起きる前の早朝にストラップを集中して製作する時間を設け、この日を境にこの新しい発見に情熱の全てを費やすのでした。

それから15年が経過した現在、彼はカリフォルニアのアトリエで50年以上前の乗馬用のサドル(英国製)を解体していました。なんとそのサドルから摘出した革でストラップを製作していたのです。現在そのストラップは「史上最も美しいビンテージ時計用ストラップ」として世界中のハイエンドビンテージウォッチ愛好家からの注文は勿論、PHILLIPS AUCTION(フィリップス・オークション)にリストされる、超高額落札が予想される看板のような腕時計のヴィジュアルフォトに多く採用されるようになりました。

この度Wolf&Wolffではこのビンテージサドルレザーを使用した特別なストラップの製作を依頼。この秋販売を予定しています。


たしかにオークションカタログを眺めていて、「このストラップは一体誰が作っているんだろう」と確かによく思うことがありました。そのようなプレミアムピースへのアテンションやリザルトがちょっとでも高く、そして純粋に欲しいと思わされるような魅力ある時計の一部として一役買っているわけですからね、ストラップのような装飾品であっても勿論。

今回、私がアメリカでル・マンを手に入れたことから(詳しくは前回のウェブマガジンに掲載)知人を通じて知り合ったアティーラさん。元々革職人というわけではなく、ビンテージウォッチの魅力を最大限に引き出すことを目的とするフォトグラファーでありコメンテーターでもある、圧倒的にファンサイドであったことがやはりここまで面白く、そして突き抜けたプロダクトを考案できる所以でしょうか。

やはりどの時代にも行き過ぎたクリエイティヴを試みる、普通ではない製作者はいるものです。沢山のビンテージサドルに囲まれたスタジオで泥臭い作業をしているその傍に普通にパテックやカルティエ(それも極上のもの)が置かれているのがとにかくすごいギャップでした。これらはオークションハウスなど顧客から持ち込まれた、これからコンセプトに合わせられた最適なストラップが装着される個体達なんですね。↓は彼のインスタグラムにもポストされている作例の一部。

ご覧のように、意外かもしれませんがゴールドケースであったりドレス寄りの時計にもマッチングが美しいですね。それにしても、単なる表面的な美しさだけではなくこれら歴史的腕時計が秘める文化的なバックグラウンドごと引き上げているというか。ただ面白いことをやりたいだけではない、「一体何を表現したいのか」説得力が感じられます。

今回オーダーしたベルトは計10本。一緒にどのサドルを使用するか選び、具体的にどこをどう切り取るか決めて、シェイプ、ステッチカラー、コバに塗る絵の具みたいなのも色を決めたりと、結構細かかったです。サイズは19ミリと20ミリ。入荷までまだお時間ございますがお楽しみに。↓はスタジオで山積みにされていたオークションカタログから付箋されていたページのダイジェスト。

いかがでしたでしょうか。我々に常に興奮と夢を与えてくれるオークションハウスやコレクターの特別な時計達に装着される、Attila Aszodi氏によるスペシャルなストラップ。現在アジア圏では展開されていないのですが、Wolf&Wolffの、この時代と逆行するただただ文字が羅列するウェブマガジンを気に入っていただき、ちゃんと取り上げてくれるのであれば、という条件でお取り扱いが実現しました。高いのでとりあえず10本ですが、気になる方はご連絡お待ちしております。