先週はシンガポールから入り、香港、マカオに滞在していました。やはりビンテージウォッチの本場というだけあって日本ではなかなか見つけることが難しい沢山の珍しいモデルを見ることができます。しかしそれらの価値が今後もそう簡単には崩れるものではないということを彼らは知っています。ですので例え売り物であってもなかなかに強気な値段を言われてしまうんですね。加えて今の円安を考えても正直海外仕入れは現実的ではないのが現状でしょう。しかしニ本だけ、このニ本だけは多少高くても買っておいた方が良いという判断で、ひとつは私が、そしてもうひとつは友人(新しく来月オープンする時計と眼鏡のお店の代表)が、仕入れることにしました。
本日ご紹介するROLEX(ロレックス)は、香港で見つけたRef.1501、1965年製のオイスターパーペチュアルデイト。しかも極上の「トロピカルダイヤル」です。
まずトロピカルという名称は「経年変化が生んだブラウンに変色したダイヤル」から命名されているわけですが、現在の暗黙のルールとしましては「劣化を感じさせるような過度の経年感は認められず、ダイヤル全体が満遍なくブラウン化、又はグラデーションとなっていて、さらにミラーダイヤル特有の艶感が強く残っているダイヤル」のみトロピカルと呼んで良いような空気感がコレクター間では漂っているように感じます。今回入荷しましたこのトロピカルはまさに理想的なまるで「最初からこの色だったかのような自然さ」のある極上個体で間違いありません。それが今人気を集めている小振りのケースサイズ(34ミリ)で、勿論針や夜光、ベゼル、リューズ、ブレスに至るまでオリジナルコンディションとなります。
綺麗なミントコンディションのミラーもそうですが、今回のような理想的なブラウンに経年しているトロピカルダイヤルとなりますと、ちょっとやり過ぎなくらいお金を出さないと(ほとんど言い値)買えない時代になりました。だから、出してやりました。お見逃しなく。
さて、人気の1501から極上のトロピカルダイヤルが入荷。上にも書いてあるように、真のトロピカルとは一切の経年劣化を認めない、という厳し過ぎる目を持つコレクターが多いのが現状なので(そこまで厳しくする必要はないんじゃないかなと私は思いますが)、このような絵に描いたような栗色で、しかも夜光もクリームで綺麗な形状を維持していて、ガサつきやムラがなく、おまけに艶感もあります、というトロピカルは殆ど存在しません。1時から3時まで僅かな針擦れはありますが、もうここまできたらカウントしなくて良いでしょう。とにかく理想的なブラウン具合、そしてコンディション。



発売までに時間と、アテさえあれば以前販売した1501ビッグロゴのようにストレートエンドバータイプにブレスを改造しても良かったかもしれません。サンダーバードもそうですがこのタイプのベゼルにはフラッシュフィット無しでも本当に雰囲気が良い。以前からよく言っているように、イレギュラーな個体であるほどそういうマニア仕様というか、プラモデルの感覚で仕様変更しても面白いのです。



綺麗にトロピカル化した個体は非常に美しく、そして手に入りにくいことから「頑張れば意図的に作れるのではないか」と以前から一部の海外コレクターの間で話にあがることがありました。私も一時期本気で考えたことがありました(ただの興味です)。日焼けサロンに持って行ったり、日光浴をさせてみたり。しかし何も変わる気配はありませんでした。最終的には「そもそも色とはなんぞや」という原点に着目をし、色の三原色である赤、黄、青の中の青だけに反応する周波数を調べ、ライトを製作したこともありました。それでも何も変わりません。要は、そこまでしてでも理想的なトロピカルが欲しいと思わせる、何か、ビンテージウォッチの極地的な、「いつかは自分も」というロマンみたいなものが皆の中にあるんだと思います。