TORU ICHO

Created through consultation in the atelier, ICHO’s clothing express a Japanese sense of lightness. Although completely custom-made, it is not a mere reflection of the client’s ego, but brings out the charm of the wearer and allows them to take the next step lightly.

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「おもしろい人がいる、ただ若い方ではない」「高級でオリエンタルなものを作っている」

昨年、そのように紹介されて初めて訪れたのがTORU ICHO(トオル・イチョウ)のアトリエでした。それ以降、自分自身が着るためにいくつかのシャツやショートパンツ、それにコートなど個人的に注文させてもらっています。それらのピースは現在展開しているインラインとは毛色の異なる、TORU ICHOがスタートして間もない2000年頃のコレクションがヒントになっています。この度、TORU ICHO×Wolf&Wolffのカプセルコレクションを「5月20日(土)と21日(日)」の日程で受注会を開催することが決まりました。

今から20年以上前、今でいうところの青山のドリス・ヴァン・ノッテンの横で直営店がスタート。当時は国内より海外のセレクトショップでの展開が中心だったそうです。たしかにロサンゼルスのMaxfield(マックスフィールド)でこの愛嬌のあるタグを見た記憶があります。同じラックにはキミノリモリシタやポール・ハーンデンが。あの時代と同じく、ストリートカルチャーがピークを迎えた後のこの鋭くてそれでいてウォーミーな洋服が今、また一周回って気分ではないでしょうか。

鴨脚さんのデザインで最もユニークなポイントは、簡単に言えば全てが「トゥーマッチ・ディテール」であること。この言葉に尽きるでしょう。情報量がとにかく過多。しかしながらそれらが最終的には非常にシンプル、コンパクトに理由はよくわからないのだけれど見事にまとまってしまうというマジック。そしてそこに、スイート過ぎる、柔らか過ぎる、最近では全く見なくなった「オリエンタル」な高級感が感じられるのです。そのある意味どこよりも「ドメスティック的」であることに惚れて私は愛用させていただいています。

近年のファッションシーンは稀に見る偏り方をしていると私は感じているのですが皆さんはどう捉えているでしょうか。若者による若者のための、仮にクレヴァーな超感覚者であっても思い切りスケールダウンしないと戦っていけない時代となりました。そして変態は戦場から消えました。その結果、多くの大人がティーンのような格好になりました。誤解を恐れず言うと、人として熟成されたデザイナーが減ってしまった印象がある。だからこそ、TORU ICHOのような大人になっても「学ぶことのできる場所」は今や貴重な存在なのではないでしょうか。

さて、オーダー会は本来でしたら丸の内のショールームで行うところですが、洋服をご紹介するには狭すぎるのと、今回に限っては鴨脚さんのアトリエにみなさまをお招きしようと考えています。この美しい空間に実際にお越しいただいて初めてこの洋服のこと、そしてなぜTORU ICHOを今推したいのか理解していただけるはずです。


ということで急なお知らせですが5月20日(土)と21日(日)にTORU ICHOの受注会を開催します。場所は青山のアトリエで予約制となります。住所は一応非公開ということなので、ご予約いただいた方にコンファームと併せて住所をお伝えさせていただきます。

さて今TORU ICHOのアトリエに来ています。ウッドの色やカーペットの色、置いてあるものひとつをとっても、単に日本的だということではなく、海外から見たときの「ザ・JAPAN」という印象を受けるんですよね。どことなくNHKワールドっぽいというか。ロサンゼルスの高級和食屋さんのような、やや強引な日本感。漢字ではなくアルファベットで書かれたTATAMIのような、そういう軽妙さを感じられる空間と言えばいいのでしょうか。でもこの感覚って今最もアメリカっぽいんですよ。外国人すごく好きだと思いますよ。

このアトリエは、たとえば今年のコレクションのみサイズから色から全てが揃っていますよといった、そういうことはありません。どういうものを作っているのかをお客様に感じていただけるように、ふと思いついたらそれを形にして次に来ていただくときに見てもらう、言わば玩具箱みたいな場所かも分からないですね。

今回のカプセルコレクションでは計5型をご用意しました。ショートパンツ、シャツが2型、ロングパンツ、コートです。どれも20年ほど前のコレクションを、より今っぽくアレンジしたものとなりました。

まずはショートパンツから。昨年鴨脚さんの息子さんが履いていらしたミリタリーパンツが良い意味で全然今っぽくなくて、昔のキミノリとかあの辺りの空気感ありますねって聞くと、やはり20年ほど前に製作したものということで。それをベースにアレンジしました。ロングパンツだったものをショーツに作り替えるということは、もっとシンプルな見た目になるのかなって思っていましたが。そしたらディテールを全て残してくれた。この狭い面積にまさかの全部盛り(笑)。

ベースとなる素材はできるだけハードな、洗っても耐えれる素材と言われておすすめしました。あまりにパンパンな生地だったので、最初はちゃんとパンツになるのかなと思いましたが、洗い込んで馴染むことを考えるとこれくらいでよかったかなと。

着丈の長いものを着たとき、全部は見えないけれど一部分だけが顔をのぞかせている感じが好きです。というかそれで助かってます(笑)。あとはこんな仕様も。全シルク。もう3枚ベンタイルシリーズは持っているので4枚目は思い切りイメチェンみようと。

今回のオーダー会ではこのような生地を極端にアレンジしたようなリクエストも受け付けているということで。でもなんでもOKってことにはならないんですよね。鴨脚さんの中で違和感を感じたら「こっちの方がいいんじゃない」とアドバイスは必ずくれる。安心してオーダーできますよね。この総シルクチェックも生地だけを見ていた時は派手すぎるかなって僕言ってたけど「全然大丈夫じゃないですか」って。そしたら本当にそうだった。

最終的にお客さんに喜んでもらわないといけないわけですから、「言われた通りに作りましたよ」ではだめなこともあります。できたら120%満足してもらいたいですし、そのために「イメージとは違ったかも」とはならないよう、気になることはお伝えしていますね。

次はシャツですが、2型作っていただきました。テーマが「アーティストシャツ」ということで、割烹着のようなざっくりプルオーバー。襟がスタンドカラーのものと、もう一つはちょっと変態感があってゴムの仕様。

先ほどのシルク100%のショートパンツと同じく、子供服を大人が着られるように仕立てたようなホッとする温もりがありますね。そしてそこから生まれる余裕感というか抜けた空気って言うのでしょうか。そこがやはりインターナショナルでラグジュアリーなんです。

こういう、本来当たり前にあった、世界のどこに行っても着ていけて、海外の人とでも話のネタになるような洋服を作っている日本のメーカーってどんどん少なくなっている気がします。そういう意味でもTORU ICHOのスタンスは貴重な存在なんですよね。

おもしろおかしい商品を作っているブランドはたくさんあると思うんですが、そういうものは世界が舞台の人からするとちょっと着られないなと思われることもあると思います。いずれにしても、きちんと手間暇をかけたものが少なくなってきているのは事実ですね。

あとロングパンツのご用意もございます。これも2000年頃の空気感ですよね。言われるまでは分からないんだけど、言われてみると納得できる。昔のズッカとか、あの時代のあの空気感。

最後はコートです。冬にコートが欲しいと思って素材などを伝えて、それこそデザイン画まで描いてもらっていたのですが、「こんな感じかな」って持って来てもらったこれを見て、それまでの打ち合わせが全部すっとんじゃって。結局「これと全く同じものをお願いします」って(笑)。

このコートを作ったのは23年前ですね。生地は同じものがなかったので、当時のものを真似て一から作りました。裏は撥水加工で、雨や雪の季節は裏返しで着ることができます。マントのような特徴のあるシルエットが、あらゆるインナーをまとめてくれるオーバーコートのようなイメージです。

色々付き過ぎてて最早トレンチコートでもなくて、とにかく「全部足し算しました」っていうデザインが最高。もうね、今欲しい物って極端に無表情なものか、めちゃくちゃに盛り込まれたものの二択なんですよね。だからこれはもう本当理想。裾に向けて広がるたっぷりとしたシルエットの、カプセルコレクションで唯一のアウターです。

それとこれはおまけですが、こんなものも最近作ってみました。もしよかったら参考にしてみてください。軍モノのパンツです。知り合いの生地屋がこの生地を紹介してくれて。昔のミリタリーの生地を真似て作ったんですって。

これすごく良いグレー。コンクリートみたいな。このディテール全部上に持って来てショーツにできませんか?またそれかよって感じですが(笑)。

シルエットはどうしますか?とりあえず次会う時に見せれるくらいのサンプルに仕上げて提案差し上げますよ。

このように、別にカプセルコレクション以外のオーダーであってもなんでもアリです、極端に言えば。一旦この辺で締めさせていただきます。TORU ICHO、いかがでしたでしょうか。彼のデザイナーとしての魅力は写真や文章だけでは決して伝わらない、言葉にすればするほど指の隙間からこぼれ落ちていくような感覚が私にはあります。

繰り返しになりますが、オーダー会は5月21日(土)と22日(日)の2日間です。場所は東京青山近辺ですが、普段は公開していないアトリエのため、場所はご予約いただいた方にメールで直接お伝えいたします。時間は両日とも11時〜18時です。ご希望の方はメールよりお名前、お日にち、お時間をお知らせください。それではご来場を心よりお待ちしております。