ROLEX 5500 “Arabic numerals”

A very unique and rare ROLEX OYSTER-PERPETUAL reference 5500 AirKing “Arabic numerals” with stunning ivory dial and beautiful original hands from circa 1966.

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「エアキングに始まりエアキングに終わる」という台詞があるように、34ミリケースサイズと特徴の薄いスタンダードなフェイスを持つAirKing(エアキング)を所有したいと思う場合、主に動機は二つに分かれるのではないでしょうか。一つは「駆け出しの一本目」。初めて買うROLEX(ロレックス)の錚々たるラインナップ、プライスレンジを見た時、果たして自分なら現実問題どこが落とし所となるか、時に妥協ありきで選ばれるエントリーモデルとして。そしてもう一パターンはもう散々色々と手を出してきたコレクターが何故か急に「エアキングが欲しい。気付いてしまった」と言い出すケース。今回入荷したエアキングは後者のための、特別なデザインを持つイレギュラーなダイヤル、その名も「Arabic numerals(アラビック・ニューメラルズ)」をご紹介します。

もう長くやられている方でしたらご存知かもしれませんが、6〜7年前に一時期コレクターの間で流行したことがあります。その名の通り1から12までの全てのナンバーがアラビア数字という、ある意味あまりロレックスらしさのないダイヤルデザインが一番の特徴。次にカラーはアイボリー調で、この時代標準であったシルバーダイヤルとは質感が異なることからも、「これは珍しい」と一目で判断できるのも嬉しいポイント。エアキングも歴史を辿れば1940年頃から存在するのですが、皆が想像できるエアキングといえばやはり60年頃〜88年頃まで生産されたリファレンス5500でしょう。その中でも最もレアリティが高い通好みな仕様で言えば「ボーイズ・エクスプローラー」、「ブラックミラーダイヤル(良コンディションに限り)」、そしてこの「アラビックダイヤル」の3つが挙げられます。これらは当然ノーマルダイヤルに比べ高額にはなりますし、今日簡単に見つかるものではありません。しかしヘビーな愛好家がもしデイリーに「エアキングを巻く」という結論に至ってしまった場合、結局は普通であっては困るのです。他のコレクターから見た時に、きっとあの人は家に帰れば沢山のレアなスポーツウォッチがあるに違いない、と想像してしまうような「エアキングなのに底が見えないある種の怖さ」こそがアラビックダイヤルの真の魅力であると私は考えます。


珍しい「アラビックダイヤル」が入荷しました。ご覧のように、毎度のことですがダイヤルコンディションに言うことはありません。全ての数字がアラビア表記となるこのイレギュラーなデザインは前期と後期で2パターン存在します(たしか)。ちゃんと調べていないので間違えているかもしれませんが、大きなポイントで言えば63年以前のシングルスイスでは夜光が内側に寄っていて、それ以降のT SWISS Tダイヤルでは目盛りの上に夜光が乗っていますね。これは66年製なので後期のダイヤルがセットされています。

それにしても興味深いのはセットされるパーツの一貫性ですね。1500ビッグロゴのようにある一時期だけ(それも1~2年程度)作られている場合、その年式を象徴するダイヤルカラーや針の形状であることが当たり前ですが、この5500アラビックに関して言えば、60年頃から67年頃までけっこう長いこと生産されていたにも関わらずダイヤルカラーはビッグロゴやプレデイトナのような60年代初期を感じさせるアイボリーカラーで、針もその年代にマッチしたリーフタイプのまま、67年頃まで通しちゃってるんですよ(本来67年でこのパーツの構成は矛盾する)。だからこの個体のシリアルを見たときに最初驚きました。

そういえば先日、香港からコレクターのジョンソンが日本に遊びに来ていて、ウェルカムディナーをした時に私のコレクションをいくつか見せたのですが、一番食いつきが良かったのがこのアラビックエアキングでした。彼はちょっと異次元だから、この日も奥様とペアでカルティエのクラッシュを2本着けていましたが、もうそこまで行ってしまうと逆にこういうマニアなものがより面白く思ってしまうのかもしれません。しかしそのあと「これを見て」と言って見せてくれた写真にはこれまで一度も見たことのない全ブレゲ数字のダイヤルが写っていました。こんなのもあるんですね。詳しくはわかりませんでしたが何かのプロトタイプのようで、ジョンソンのコレクションの一つだそう。

今回5500アラビックダイヤルをご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。本当はブレスレットをストレートバータイプに改造してから出したかったのですがパーツがありませんでしたのでこのままのお渡しとなります。1500ビッグロゴやカナディアンアクスプローラー等と同様、リファレンス自体は割と一般的であったとしてもダイヤルにスペシャル感がある場合、ブレスレットやクリスタルを積極的にカスタムするのもマニア感が格好良いのでぜひ参考にしてみてください。

最近特に海外にいて思うのですが、やはりこういう多くの人とはシェアできないようなマニアックなアイテムは日本より圧倒的に海外の方がニーズがありますね。以前は断然日本でした。そしてこのマニアな顔したロレックスの正体、実はエアキングなんですという意外性が愛好家目線としてはとにかくポイントが高いわけですが、結局のところ「時計として格好良いかどうか」は全く別の話です。ただ個人的には、この主に60年代初期に見られる特徴的なホワイトダイヤルとリーフやドルフィン型の針、そしてなんと言っても34mmという今後トレンドになりつつある小振りなケースサイズは、「ファッションという括り」で見てもイカしたジュエリーであることは間違いありません。