Aram Vanerian

Handmade in Los Angeles, CA, exclusively with precious metals and individually selected fair-trade gems, the collection highlights the quality and integrity of these minerals through striking and informed design.

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1960年頃よりロサンゼルスに存在するアメリカ最大規模の宝飾取引街「ジュエリー・ディストリクト」にて、40年以上もの間ゴールドスミスとして活動を続ける「ヴァネリアン一族」。近年は「VANIE(ヴァニー)」というコレクションラインの下、世界中の「もう普通では物足りなくなった」ジュエリーファンからの注文も受けています。

主に宝石とゴールドが専門のなんとも豪華絢爛なファミリービジネスを展開する一族なのですが、メンバーの一人「Aram Vanerian(アラム・ヴァネリアン)」に関して言えば、彼は少しだけ方向性が異なります。穴の空いたビンテージのセーターに、塗料が滲みたイギリス軍のチノパン。腕にはROLEXのバブルバック。粗野なファッションだけで見ればあまりにも似つかわしさがありません。さらに指には自身が製作したベコベコに凹んだ24Kのゴールドリング。この風貌は家族や顧客から見たらイレギュラー、しかし見方を変えればキアヌ・リーブスでもあります。実際に身を置いている環境との強烈なギャップが、私には魅力的に映るのです。

アラム氏の得意とするデザインは、自身が着けているリングにも言えるような「ザ・トラディショナル」一本勝負。ですので圧倒的な宝飾感が魅力のVANIEの世界観からすれば悪く言えば退屈でそして直球過ぎるのかもしれません。しかし私がそうであるように「この先々常に着けていられる物」として、そしてファッションとしてはより派手にではなく引き締める物として捉えるのであるならば、アラム氏がデザインするこの「黄金色の塊」にきっとご満足いただけるでしょう。

そして、ジュエリストと呼ばれるような存在の彼らに、一つだけ何か特別な宝飾品を注文する場合、「どういう人物に願掛けをしてもらいたいか」が詰まるところ重要であるように私は思っています。


そんなアラム氏の来日が決まりました。4月24日から5日間、東京、大阪、神戸、京都に滞在します。どういうスケジュールで動くかまだ未定ですが、基本的には彼のコレクションにご興味がある方と都合の良い場所で待ち合わせてお見せするという流しのスタイルになりそうです(東京では丸の内オフィスが使えます)。やはりきっちり開催場所を設けてしまうとショートの滞在では身動きが取れなくなってしまいますので。ご協力ください。

イベントの具体的なお知らせやラインナップについてはまた改めてこちらでご案内します、お待ちください。さて先日、ジュエリーディストリクトにあるアラム氏のアトリエを訪問。この由緒あるエリアには他にも沢山のジュエリー職人が製作所を設けています。例えばLAを代表するシルバーメイカーを担当する職人も普通に作っていたりと、行くだけでもけっこう面白かったりします。

何度かお邪魔したことあるのですが、想像以上に泥臭い雰囲気なんですよここ。決してラグジュアリーを作っている現場には見えない硬派な空気感。この日はたまたま出荷前のアイテムが多く見応えがありました。

それにしても普段はアラムがデザインするクラシックな物しか見ていなかったので、こう本ちゃんのラインナップを実際に見るとけっこうびっくりするものが多いです。第一声「これいくらなんですか」と思わず聞いてしまう、決して自分のスタイルではないのですが、ここまで行き来っていると糸目をつけない顧客からすればこんなに楽しいことはないだろうと確かに理解させられます。

ご覧のようにゴールドにダイヤモンドや天然石のコンビネーションでオーダーする顧客が多い印象ですね。たしかにあまりいくつもジャラジャラと着けるよりも最近は一点完全完結型の方が気分というのもあるのかもしれません。そうなるとよりユニークでビッグな存在感のあるピースほどやり易いですよね。さてここからは本命であるアラムが手掛けたコレクションを。

一部ですがこの辺りが個人的に好きですね。中でもターコイズのビッグリングに関してはインパクトだけの話で言えば頭一つ抜けています。しかしどれもがその素材以上に目立つような装飾は控え目なのがアラム作の特徴。そして何よりこの「太古感」が洋服との親和性を無視できるのが良いですね。全くの別物として。

これらは来日時に全て持参する予定ですが、当然これ以外でも極端な話「全く0からのパーソナルオーダー」も可能です。その場合はどうしてもデザイン料が別途掛かるケースがありますがやはりもうこういう世界ですのでそこはご理解ください。ご参考までに今私が着けているプラチナのプレーンリングには計20個のダイヤモンドが一周装飾されています。しかしこのようなベースに対してプラスアルファのリクエストであればデザイン料は乗ってきません。

いかがでしたでしょうか。見ているだけでクラクラするようなラグジュアリーの王道を歩む作品の数々をロサンゼルスよりご紹介しました。現在この伝統的な聖地であるジュエリーディストリクトは窮地を迎えています。それは職人の高齢化です。この日もいくつかのアトリエを訪ねましたが若い職人は見ていません。世の中の今だけを切り取って考えると若い人々には正直難しい職業なのかもしれないですね。たしかに高級品を売りにするメイカーも完全にターゲットを「無茶苦茶やる反社でも構いません」に切り替えましたから、このような伝統的な、文化的な、泥臭いクリエイションから生まれる「オーセンティックな美」は時代ではないことは確かです。しかしなぜか注文は以前に比べ増えているとのこと。一体どういう人々によるオーダーなのでしょうか。おそらくSNSには出てきませんよね。

最後に。ファッションというものは当然次から次へと魅力的な物へと心変わりしていくことが当然なわけですが、それが歴としたオーダージュエリーの場合は少しだけ異なります。一度「この人でいく」と決めてしまったらもう他に流されることなく当面の間は自分が信用するそのジュエリストとの付き合いが生まれる、謂わば共同作業のような楽しさや挑戦感が、また洋服の時とは異なる世界線で一つの贅沢な趣味となるのです。そしてこのファッション的ではないことこそが、私のような中年層をまたファッション的にさせてくれているようにも思えます。

一旦参考までにオーダー会にご興味ある方は4月19日までにメールでご連絡いただけますか?今回の来日にあたり彼のスケジューリングを全て私がやるので、事前にある程度把握しておきたいのです。よろしくお願いします。